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special <前編>上村愛子さん_自分の弱いところも
認めてあげられたら、素直な心で戦えるように

キュートなルックスとダイナミックかつ華麗な滑走で、女子モーグル界のスター選手として活躍した上村愛子さん。高校1年生でワールドカップ出場・3位に輝いて以来、数々の世界大会で好成績をおさめ、オリンピックには5大会連続入賞。2014年のソチ五輪出場後に惜しまれつつ引退した、20年間にも渡る選手生活の中で上村さんが得たものとは? 自分の道を究めた人だけがたどり着ける、強さとしなやかさのヒミツに迫ります。

profile

上村愛子
上村愛子 元女子モーグル日本代表 中学生のときにモーグルを始め、1998年、高絞3年生で長野五輪に初出場。2007~08年のW杯で日本人女子初となる年間総合優勝を達成。08~09年の世界選手権では2冠に輝く。長野から14年のソチ大会までオリンピックに5大会連続出場&入賞を果たす。ソチオリンピック後に現役を引退。

体の中がクリアな感覚が好き!
きちんと食べて汗を出すのが基本

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    モーグル選手としてずっと張り詰めた生活をされてきたと思いますが、まずは現役の頃の体のメンテナンスについて教えてください。
    「私は体が小さいので、大柄な外国人選手と対等に戦うためにはパワーが必要でした。だから食事は制限するよりもむしろ『食べないといけない』という感じで、よく食べる選手でしたね。体の中が常にクリアである感覚を大事にしたくて、水をたくさん飲んで、よく食べよく汗をかく! これが基本でした」
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    というと、鶏のささみや卵の白身などを意識したアスリート食?
    「いえ、『せっかく食べるならハッピーに食べたい!』という思いがあったので、義務感を感じないようにしていました。主食・主菜・フルーツ・乳製品などごく普通にバランスよく食べていたという感じですね。シーズン中は特に自分の体の変化に敏感になっているので、体が欲しているもの=食べなきゃいけないものが自然とわかるんです」
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    特別な食事というよりは、バランスを重視した食事内容ということですね。
    「そうです。きちんと食べることが1週間後、1年後の自分につながると思うので、普段はバランスよく何でも食べる。寒い土地ってお酒がおいしいところが多いので、オフはお酒も飲みますし、たまにはジャンクなものも食べるのですが、普段からバランスのいい食事をしていれば、影響はありません」

鉄壁のUVケアで雪焼けをブロック!
白肌キープのヒミツは「すぐ落とすこと」

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    雪の上は肌にとって過酷な状況だと思いますが、スキンケアはどうされていましたか?
    「冬の大会シーズン中は、寒いのでゴーグルやネックウォーマーなどで顔を覆ってしまうので思ったよりも焼けないんです。危険なのは夏の雪山トレーニング。海外の標高3000mくらいの氷河が残っている山でトレーニングをするのですが、太陽に近いので紫外線がすごい。雪の照り返しも厳しいので、SPF50の日焼け止めを3度塗りくらいして、さらにUVブロックのリキッドファンデ、UVブロックのパウダーを重ね塗り(笑)」
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    完璧な対策ですね! でも肌への負担が大きいのでは?
    「そうですね。だから、練習が終わるとすぐに落とすのを習慣にしていました。朝から滑って、だいたい14~15時には終わって山から下りるので、宿泊場所に帰ったら真っ先に顔を洗って、肌をリセット。海外は日本とちがって硬水のところが多く、肌が荒れてしまうので、エビアンやアベンヌのスプレーを常に持参して、小まめに顔にスプレーしていました」
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    TVなどで見る上村さんは、いつもきれいな肌だったのは、そういう努力があったんですね。
    「美容的な意味ももちろんあるんですが、そうした肌の不調がスキーへの集中の妨げになるのが嫌だったんです。きちんとケアして日焼けや肌荒れの心配がなくなれば、スキーだけに集中できる。そのために取り除ける心配は取り除いておく、という感覚ですね」

「誰か」の力は借りないで
自分で自分のメンタルを高めたい

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    アスリートはメンタルの強さも必要ですが、もともとメンタル面は強いほうだったのですか?
    「いえいえ、全然(笑)。むしろメンタルは弱い選手だったと思います。競技者って自分のことだけを考えろとよく言われますが、周りが見えすぎてしまって…。『競技者に向かない性格』と言われていました。30歳くらいまでは『自分を変えないといけない』といつも思っていて、バンクーバーオリンピック(2010年)まではずっとそう思い続けていた気がします」
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    それが変わったのは、なにかきっかけがあったのでしょうか?
    「そうですねぇ。きっかけはバンクーバーの後の休養かな。バンクーバーに向けて練習量、練習内容、食事、筋力アップなど、それ以上はもうできないということろまでやったんです。それこそ、自分の中ではメダルに一番近いところまで高められていたと思う。それでもメダルには手が届かず、なんでだろう? と考えたときに、最後に残っていたのがメンタル面だった」
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    バンクーバー後、1年間競技をお休みされましたね。その1年が大きかったのでしょうか?
    「バンクーバーでやりきった思いもあったから、その後、一度スキーから離れて普通の生活をしてみたんです。そうしたら、改めて自分はスキーが好きなんだという思いが湧いてきて、一番最初にオリンピックに出たときの気持ちを思い出した。プレッシャーもなく、周りからたくさんの拍手がもらえて『なんて楽しいんだろう』というキラキラした気持ちを」
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    そうして次の五輪を目指すことを視野に入れたときに、メンタル面のトレーニングを始めたのですか?
    「トレーニングとは少し違います。『もっと心地よく、最後のオリンピックを迎えられるんじゃないか』と思ったとき、今までいろいろ自分を変えようと努力してきたけれど、『自分を否定するんじゃなくて、受け入れてあげよう』という気持ちが湧いてきたんです。自分の中に自然に湧いた思いに従ったという感じですね」
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    では、専属のメンタルトレーナーなどはつけずに?
    「誰かの力を借りて自分が変わるのは、なんか自分らしくないなと思って。自分のままで答えを出したいというか。だから、その答えが出るまでに時間もかかったのですが…(笑)。ソチ五輪までの最後の3年間は、夫(元アルペンスキー選手の皆川賢太郎さん)や周囲のサポートもあって、すごくメンタル面が変わったと思います」
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    ありのままの自分を認めて、受け入れるということですね。
    「例え失敗してもそれが自分だし、できないことがあってもそれを受け入れながら『じゃあ、その中でできることは何かな』と探していく。試行錯誤の過程が自然と強さに変わった気がします。自分を否定して戦うのではなく、受け入れて乗り越える方法を考える。それが結果的に内面の強さを作ってくれたんじゃないかな」
  • 9/7(水)公開予定の 後編 では、引退後からの生活や意識の変化について、また今後の展望について、上村さんの「これから」をご紹介します。
  • ・衣装クレジット
    黒トップス¥26,000/VOUSETES、ピアス¥37,800、ブレスレット¥35,640/ともにスタージュエリー
Hair&Make-up:Yuko Umezawa/Photo:Yusuke Katsuyoshi(PEACE MONKEY)/Stylist:Ikuko Tomita/Text:Nobuko Yusa
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